中国体彩网(学長:林由起子/東京都新宿区)の医学総合研究所の落谷孝広特任教授、東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター次世代創薬研究部の藤田雄准教授、内科学講座呼吸器内科の門田宰助教、荒屋潤講座担当教授、外科学講座呼吸器外科の大塚崇講座担当教授らの研究グループは、細菌性肺炎やウイルス性肺炎、敗血症など様々な傷害によって引き起こされる致死的な急性肺傷害(Acute lung injury: ALI)に対し、肺由来の細胞が分泌するエクソソームを含む細胞外小胞(Extracellular vesicles: EVs)が、輸送する炎症や免疫応答に関与するリン脂質結合タンパク質であるアネキシンA1(ANXA1)やマイクロRNA注1を介したシグナル制御などによって、治療薬となることを発見しました。本研究グループは先行研究にて、ヒト気道上皮細胞(Human bronchial epithelial cell: HBEC)が分泌するEVsが、特発性肺線維症の病態の改善効果があることを発見注2しており、今回の研究では、同様のHBEC由来EVsが、細胞から分泌される天然成分として高い抗炎症作用を有してALIへの治療効果があることを明らかにしました。
この研究成果は、Nature Portfolioが提供するオープンアクセスジャーナルの「Communications Biology」に掲載されました(日本時間 2024年5月6日公開)。
【研究の概要】
- HBEC-EVs は、急性肺傷害を模倣した細胞モデルにおいて有意な免疫調節効果を示しました。
- HBEC-EVsに濃縮された上位10種のマイクロRNAのうち9種が免疫関連経路を制御していることが分かりました。また、これらのマイクロRNAはToll-like receptor(TLR)シグナル伝達経路注3と強く関連していました。
- HBEC-EVsでは、重要な炎症の制御因子であるWNTおよびNF-κBシグナル伝達経路を制御するタンパク質の存在が明らかになりました。
- HBEC-EV内のタンパク質の一つであるANXA1は、FPR2受容体と相互作用し、抗炎症作用をもたらすことが分かりました。
- HBEC-EVsの気管内投与により、肺損傷、炎症細胞浸潤、サイトカインレベルが減少しました。
- これらを総合すると、マイクロRNAとANXA1の移送を介したHBEC-EVsによる免疫調節のメカニズムには、TLR-NF-κBシグナル伝達経路が関与し、ステロイドなどに代わるALIに対する新しい治療薬の可能性が示唆されました。
■プレスリリースはこちら>>
■医学総合研究所分子細胞治療研究部門HPはこちら>>